魔女とあたしは同じ道を歩きながら

あたしは未来が読める女なんだよ。


あたしは夜通し飲み歩き、始発のバスの中にいた。
夜は既に明け、人間は今日一日を始めようとしていた。外を見れば遠い所は遅く、近い所は早く動いている。当たり前の事だわ。
車内を見渡せばハゲを隠したいが為に横から髪の毛を持ってきてる出勤途中のオヤジがたくさん、白髪交じりなんかもいやがる。
吐き気がした、アルコールを摂取しすぎてバスに揺られたせいなのかもしれないけれど。
あたしはこの妙な空間が嫌で嫌でしょうがなく、バッグにしまってあったMDプレイヤーをおもむろに取り出し、ヘッドフォンを耳につけ目を閉じた。あぁ心地よい。


好きな音楽を聴いて目を瞑っていると、時間が過ぎるのが早い。いくら近づきたくない出勤途中のオヤジが座ってこようが我慢出来る。
何分か、何十分か、何時間かわからないけれど、かこの箱という一定空間の中に座って揺られていると目的地に到着した。
あたしは音楽を聴きながらわざとふらふら歩いてみた。道路脇の排水溝の穴にミュールのピンヒールをはめてみたり、道路の真ん中を裸足で歩いてみたりした。クラクション鳴らされた。
やっとの事で灰色をしたなんか冷たいコンクリートとおさらばし、自宅についた、眠い。今日はなにをしようか。。。あ、学校行かなきゃ、あたし高校生じゃん。


あたしは学校へと向かった。途中何度も帰りたい衝動に駆られたが、いい暇潰しの場所だったのでちゃんと行く事にしたよ。
授業なんか正直どうでもよかった、好きでもないし嫌いでもない。ただ知識がつく点で考えたら受けなきゃいけないと思った。
嫌だったのが休み時間だ、みんなこぞってグループ単位で集まり魔女のような変な笑い声が響きやがる。

声がキライ、声がキライ、お前らがキライ

なにそんなにこぞって集まってるのかが理解不能。泣くよウグイス平安京ぐらい理解不能。
好きな者同士集まって喋る、おもしろそう楽しそう。だけど、絶対愛想笑いもあるんでしょ。。。あたしは愛想笑いが出来ないから集まるとか嫌いだわ。
あたしは横目で皆をチラチラ見ながらマニキュアを塗る、もう未来は分かってるんだよと、思いながら。


とうとう昼休みに我慢出来なくなって学校を飛び出した。行く先も決めないままふらふらと歩いていく。
オフィス街についた、朝みたバーコードハゲをたくさん見かけたよ。
こいつらも学校のやつらも一緒だ、みんな森の中にいてたくさんの迷路みたいな道を自分で選び、自分の力で歩いていく。
自分は自分の人生、ひとつの道だ。と言う。そんなの嘘だよ、生まれる前の人間が道を作り、あたし達はその作られた道を選びながら生きていく。
サラリーマン、OL、歌手、芸人、大学教授、医者、政治家。道は色々あるけれど選んだのは自分。道を切り開いたのも自分。作り出したのは自分ではない。
こう思い出すとあたしは未来は既に存在してるんじゃないかと思うよ。自分の未来。


みんな人間が作り出した。今いる場所だって、道、ドア、窓、屋根、洋服、車、バイク、木でさえ人間が植え替えている。人間だって人間が作っている。
唯一、人間が作っていないものがあるよ、あたしは見上げてみた、空だよ。誰も手を加えていない青い空。


こう考えてしまうあたしはもう過渡期なのかもしれない。
どんなにあたしが谷底で叫ぼうが、深海で叫ぼうが、意味が無い事なのかもしれないわ。
だって未来は存在しているもの、あたしがなにをしようがあたしは人間が作った決められたレールという道の上を歩いていかなきゃいけないの。




9月に書きました。あれ…時期が…。